木材の美しさを最大限に引き出す方法として、オイル仕上げは多くの木工職人や家具メーカーに選ばれています。
特に銘木を扱うプロの視点から見ると、オイル仕上げは木の質感や木目を際立たせ、自然な風合いを保つための最適な手法です。
本記事では、木製品にオイルを塗る理由や効果、使用するオイルの種類、選び方のポイント、そして日常のお手入れ方法まで、初心者にも分かりやすく解説します。木製品の魅力を長く保つためにぜひ参考にしてください。
木にオイルを塗る理由と効果
木材にオイルを塗ることで、木の自然な風合いを保ちつつ、耐久性や撥水性を向上させることができます。
また、オイルは木の内部に浸透し、乾燥やひび割れを防ぐ役割も果たします。これにより、木製品の美しさと機能性を長期間維持することが可能になります。
オイル仕上げとは
オイル仕上げとは、木材の表面に塗膜を作らず、オイルを内部に浸透させる塗装方法です。
これにより、木の質感や木目を活かしながら、保護効果が得られます。使用されるオイルは、亜麻仁油やエゴマ油などの植物性オイルが使われ、自然な仕上がりと安全性が特徴です。
オイルを塗る理由と効果
オイルを塗る主な理由は、木材の保護と美観の向上です。オイルは木の内部に浸透し、乾燥や湿気から守ることで、ひび割れや反りを防ぎます。また、木目が際立ち、深みのある色合いが得られるため、見た目の美しさも向上します。さらに、オイル仕上げは手触りが良く、木の温もりを感じられる点も魅力です。
オイルフィニッシュとオイルステインの違い
オイルフィニッシュとオイルステインは、目的と効果に違いがあります。オイルフィニッシュは、木材の保護と美観の向上を目的とし、オイルが木の内部に浸透して硬化することで、耐久性や撥水性を高めます。
一方、オイルステインは主に着色を目的とし、木材に色を付けるための塗料です。オイルステインを使用した場合、別途ニスやワックスなどでの仕上げが必要になることが多いです。
オイルの選び方のポイント

木製品に使うオイルは、乾燥性・色味・安全性などを基準に選ぶことが大切です。用途に応じた性質を把握することで、長く美しく使い続けられます。
乾性油・不乾性油
乾性油(亜麻仁油・クルミ油)は空気中の酸素と反応し硬化する性質があり、木材の表面にしっかりと保護膜をつくります。乾燥後はベタつかず、ナチュラルな質感を残しながらも、家具や食器などの木製品を美しく保ちます。
一方、不乾性油(オリーブ油・アルガン油)は乾きにくく、乾性油と比較すると保護力がやや劣るものの保湿効果があるため、メンテナンス用として使われることが多いです。
色
オイルには、無色透明で木目を際立たせるタイプと、色つきで木材の印象を大きく変えるタイプがあります。無色のタイプでも、種類によって仕上がりに微妙な色味の差が生まれるのが特徴です。
一方で、色付きのオイル(オイルステイン)は、木の雰囲気を変えるのに効果的で、家具やインテリアで個性を出したいときにおすすめです。ただし、塗布する際にムラが出やすいので塗布には注意が必要です。使用する木の種類や塗る面積、用途などに合わせて選びましょう。
使用用途(家具・食器)
木のオイルは、使用する製品の用途に応じて選ぶことが大切です。家具には耐久性や撥水性を備えた乾性油が適しています。木材に浸透して硬化し、長期間にわたり保護効果を発揮します。
一方、食器やカトラリーには、食品や口に触れても安心な植物性オイル(例:エゴマ油や亜麻仁油)がおすすめです。特にまな板やお皿などは、食品衛生の観点から純度の高い天然オイルを選ぶと安心です。ただし、クルミ油などのナッツ由来のオイルにはアレルギーのリスクがあるので使用前に確認が必要です。
木製品に使うオイルの種類と特徴

木製品のオイル仕上げには、主に乾性油が使用されますが、用途や仕上がりの好みに応じて、適切なオイルを選ぶことが重要です。
ここでは、乾性油3種類(亜麻仁油・エゴマ油・クルミオイル)、不乾性油3種類(オリーブオイル・オレンジオイル・レモンオイル)のそれぞれの特徴をご紹介します。
亜麻仁油
亜麻仁油は、亜麻の種子から抽出される乾性油で、木材の保護や艶出しに適しています。浸透性が高く、木材内部までしっかりと染み込み、自然な光沢を与えます。また、撥水性にも優れており、木製品の耐久性を高める効果があります。塗布後は、余分なオイルを拭き取り、24時間以上乾燥させることで、しっかりと硬化します。なお、使用後の布は自然発火の恐れがあるため、水に浸してから処分してください。
エゴマ油
エゴマ油は、エゴマの種子から得られる乾性油で、木材の保護や艶出しに使用されます。木材への浸透性が高く、自然な風合いを保ちながら、撥水性を向上させます。また、乾燥時間が比較的短く、扱いやすいオイルとして知られています。塗布後は、余分なオイルを拭き取り、24時間以上乾燥させることで、しっかりと硬化します。使用後の布は自然発火の恐れがあるため、水に浸してから処分してください。
クルミオイル
クルミオイルは、クルミの実から抽出される乾性油で、木材の保護と美観の向上に適しています。木材に深く浸透し、自然な艶と滑らかな手触りを与えます。また、通気性を保ちながら塗膜を形成し、木材の呼吸を妨げません。食用としても利用されるため、安全性が高く、家具や建具の仕上げに適しています。ただし、クルミアレルギーのある方は使用を避けてください。
オリーブオイル
オリーブオイルは、不乾性油であり、木製品の保湿や艶出しに利用されます。特に木製のキッチンツールや食器のお手入れに適しており、木の乾燥を防ぎ、自然な風合いを保ちます。塗布方法は、柔らかい布に少量のオリーブオイルを含ませ、木目に沿って優しく塗り広げるだけです。塗布後は、余分なオイルを拭き取り、日陰で乾燥させます。ただし、不乾性油であるため、塗布後もベタつきが残ることがあります。
オレンジオイル
オレンジオイルは、天然のオレンジ精油から作られた不乾性油で、木製家具や楽器の手入れに適しています。浸透性が高く、木材の乾燥を防ぎ、自然な艶を与えます。また、オレンジに含まれる「d‐リモネン」という成分が汚れを浮かせ、クリーニング効果もあります。塗布方法は、柔らかい布に適量を取り、木目に沿って塗り広げるだけです。純粋なオレンジオイルは、食器など口に触れる木製品にも使用できますが、製品の成分表示を確認し、添加物が含まれていないことを確認してください。
レモンオイル
レモンオイルは、木製家具の保護と艶出しに効果的な不乾性油です。天然のレモン精油を含み、木材の表面に浸透して乾燥やひび割れを防ぎます。また、表面の汚れを落とし、小さな傷を目立たなくする効果もあります。塗布方法は、柔らかい布に適量を取り、木目に沿って優しく塗り広げるだけです。シリコンやワックスを含まない製品が多く、木材本来の風合いを損なわずに保護できます。定期的なお手入れで、木製品の美しさと耐久性を維持できます。
木製品のお手入れ・メンテナンス方法
オイル仕上げの木製品は、半年〜1年を目安に再塗布すると美しさと耐久性を保てます。特に乾燥した季節や使用頻度の高いまな板や食器などは、木の表面がカサついたり白っぽくなってきたら、お手入れのサインです。
再塗布の際は、サンドペーパー(#320〜#400程度)で軽く磨き、汚れなどを落とします。そして布にオイルを取り、木目に沿って薄く均一に塗り広げます。余分なオイルは乾いた布で拭き、その後はしっかりと乾燥させます。
グロースリング「百年木材」のワークショップ

グロースリング「百年木材」が主催するクラフトワークショップでは、樹齢100年を超える国産銘木を使ったお皿を題材に、木製品の魅力と手入れ方法を学べます。オイルケアや油研ぎなど実践的な技術を通じて、“そだてもの”として木の道具を永く楽しむ暮らしを提案します。
グロースリングのワークショップの詳細についてはこちらからご覧ください。
木と暮らすためのオイル選びまとめ
木製品を美しく保つためには、オイル仕上げによる丁寧なケアが欠かせません。オイルの種類や塗り方を理解し、定期的にお手入れをすると、木の風合いを永く楽しめます。特に乾性油は木材の保護に適しており、用途に応じたオイル選びがポイントです。
また、グロースリングの「百年木材」ワークショップでは、木製品との向き合い方や育てる楽しさを体感できます。木の魅力を暮らしに取り入れてみてはいかがでしょうか。