日本の暮らしに昔から寄り添ってきた「桜の木」は、美しい木目とやさしい香りで人気の桜の木材です。中でもヤマザクラをはじめとする桜の木材は、「美しさ」と「使いやすさ」を兼ね備えた広葉樹の代表格。
本記事では、桜材の種類や特徴、硬さや加工性、さらには経年による変化やメリット・デメリットなどをわかりやすくご紹介します。
桜材の種類とは?
桜材として利用される主な樹種には、ヤマザクラ、オオヤマザクラ、カスミザクラ、ウワミズザクラ、シウリザクラなどがあります。これらは日本各地に自生する広葉樹で、それぞれ異なる特性を持ちます。
ヤマザクラは、心材が赤褐色で、加工性や耐久性に優れ、高級家具や楽器に使用されます。北海道や本州北部に分布しているオオヤマザクラは、濃いピンク色を咲かせ、木材はやや赤みを帯び家具材やフローリング材としても利用されます。
カスミザクラは、白色の花を咲かせ、北海道から九州まで広く分布し、木材は家具に適しています。ウワミズザクラやシウリザクラも、地域によっては木材として利用されることがあります。
これらの桜材は、きめ細かい木目の美しさや香り、加工のしやすさから、高級家具をはじめ、内装材や小物まで多様な用途で重宝されています。
桜材の特徴と魅力

桜材は、木目の美しさと落ち着いた色合い、やさしい香りを兼ね備えた日本を代表する広葉樹です。見た目の上品さに加え、強度や加工のしやすさもあり、家具材や内装材として幅広く活用されています。詳しく見ていきましょう。
木目と香り
桜材の魅力のひとつは、緻密でなめらかな木目です。年輪の幅が比較的一定で、通直な木理を持つため、表面に柔らかく上品な模様が現れます。
節が少なく、なめらかな触り心地で、家具やフローリングなどに仕上げた際の高級感が際立ちます。桜材には、ほのかに甘い香りが感じられることがあり、これが「桜餅の葉の香り」を連想させることもあります。
この独特な芳香は、暮らしの中で自然の温もりを感じさせ、リラックス効果も期待できます。特に和の空間との相性が良く、香りと見た目の両面で癒しを与えてくれる素材です。
硬さと加工性
桜材は、広葉樹の中でも中程度の硬さを持ち、粘りがありつつも、折れにくい特徴があります。この特性から、重厚感を保ちながらも加工しやすく、木工の現場でも重宝されています。
切削や彫刻、接着、塗装などの工程においても扱いやすく、細部まで繊細な加工が可能です。研磨すると光沢のある美しい仕上がりになるため、高級家具や工芸品、楽器の材料としても利用されています。
手触りもなめらかで、使い込むごとに味わい深く変化するのも魅力の一つです。硬さと柔軟さのバランスが絶妙で、職人にとって「扱いやすく美しい木」として長年親しまれてきました。
耐久性
桜材は、硬く緻密な繊維構造を持つ広葉樹であり、家具や建築材に適した耐久性を備えています。
特にヤマザクラなど国産の桜は、比重が0.6程度と高めで、しっかりとした重さと強度があります。
このため、反りや割れといった木材にありがちな変形が少なく、長期間の使用にも十分に耐えられます。また、湿気に対する抵抗性も高く、内部までしっかり乾燥させた桜材は腐食しにくいとされています。
日常的な摩耗や衝撃にも強いため、床材や階段、机の天板などに使用されることも多く、安心して長年使える木材として評価されています。適切な塗装やオイルメンテナンスを施すことで、表面の美しさと強度をより長く保つことができます。
色と経年変化
桜材の色合いは、初めは淡い色調の黄白色から赤褐色で、柔らかく温かみのある印象を与えます。心材と辺材で色味に差があり、心材は特に深みのある赤褐色をしていることが多く、空間に上品なアクセントを加えられます。
使用環境によっても変わりますが、桜材は年月が経つにつれて全体的に色が落ち着き、赤褐色から黄色味の強い褐色を経て濃い茶色にへと変化します。使い込むことで空間に自然の重厚感が加わっていきます。
塗装せずにオイル仕上げを選ぶと、木の呼吸や変化をよりダイレクトに感じられます。時間とともに変化する風合いを楽しめることが、桜材の大きな魅力の一つです。
桜材の主な用途
桜材は、その美しい木目と落ち着いた色合い、高い強度と加工性の良さから、さまざまな場面で活躍しています。
代表的な用途には、テーブルや椅子、キャビネットなどの家具、フローリングや壁面パネルといった内装材、さらには仏壇や箪笥といった伝統的な木工製品も含まれます。細かい彫刻にも対応できるため、工芸品や楽器の素材としても重宝されており、バイオリンの部品や和楽器の胴などにも用いられます。
また、桜の樹皮を活用した「樺細工(かばざいく)」は秋田県の伝統工芸として知られ、装飾性の高い茶筒や文箱などに加工されています。住宅の建築材としては床や階段、手すりに採用されることも多く、見た目と機能の両立を求める空間づくりに適した素材です。
桜材のメリット・デメリット

桜材は、繊細な木目と温かみのある色合い、優れた加工性や耐久性を備えた魅力的な素材です。しかし、使用する際には特有の注意点も存在します。ここでは、桜材のメリットとデメリットを詳しくご紹介します。
桜材のメリット
桜材は、木目の美しさとなめらかな手触りが特徴で、家具や内装材に高級感を与えます。特にヤマザクラなどの国産桜材は色合いが上品で、空間に柔らかな雰囲気をもたらします。
また、密度が高く、適度な硬さと粘りを持つため、耐久性に優れ、長期間の使用にも耐えます。加工性も高く、細部の仕上げや彫刻がしやすいため、家具や建具、楽器など多様な用途に適しています。
さらに、桜材特有のほのかな香りは、室内に自然の癒しを提供し、リラックス効果も期待できます。これらの特性から、桜材は機能性と美しさを兼ね備えた素材として、多くの場面で選ばれています。
桜材のデメリット
桜材は多くの魅力を持つ一方で、使用に際していくつかの注意点があります。
まず、心材と辺材で色の差が大きいため、製品によっては色ムラやまだら模様が目立つことがあります。このため、均一な色合いを求める場合には、材の選定や加工に工夫が必要です。
また、淡い色調のため、汚れや傷が目立ちやすく、特にフローリングなどの床材として使用する際には、定期的なメンテナンスが欠かせません。
さらに、無垢材全般に共通する特性として、湿度や温度の変化により、反りや割れが生じる可能性があります。これらの点を踏まえ、桜材を使用する際には、適切な環境管理と定期的な手入れを行うことが重要です。
桜の木材で暮らしに自然の温もりを
桜の木材は、やさしく上品な木目と温もりのある色合いが魅力で、住まいの中に自然の穏やかさを取り入れるのに最適な素材です。
家具やフローリングに使用すれば、見た目の美しさだけでなく、肌ざわりの良さや香りも楽しめ、日々の暮らしに心地よさを添えてくれます。また、経年によって深まる風合いは、年月とともに暮らしに寄り添う存在として愛着が増すでしょう。
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