木育(もくいく)とは、子どもから大人までが「木とふれあい、木に学び、木と生きる」暮らしを通じて、感性と心を育むライフスタイルです。
幼少期から日常に木を取り入れ、木のぬくもり・香り・手触りなどを体験することで、感性や情緒を発達させ、環境や地域への関心を深めます。林野庁や自治体などが連携して活動を推進しており、森林資源の持続的利用や木の文化の継承にもつながっています。
この記事では、木育がもたらす効果を実例を交えてわかりやすく紹介します。
木育とは?読み方や意味
木育とは「もくいく」と読み、北海道庁が2004年に提唱し、林野庁も「木材や木製品との触れ合いを通じ、木材への親しみや木の文化への理解を深めてもらう取り組み」として推進しています。
対象年齢や場所を限定せず、子どもから大人まで誰でも「木を身近に使う」ことで五感や情緒、そして環境意識を育む点が特徴です。
木育が注目されている背景

木育は、森林資源の正しい利用と森林保全を進める国策の一環として近年注目されています。
2006年の「森林・林業基本計画」に木育の推進が明記されて以降、国や自治体、企業、NPOなどが協働し、持続可能な森林管理や地域文化の継承へとつなげています。
また、木の香りや感触を通して得られる心地よさに加えて、SDGsやESGを意識した環境教育の視点とも重なり、現代の子育て世代や地域づくりにおいて関心が高まっています。
木育がもたらす効果|五感・情緒・環境意識を育てる

木育において、木の香りに含まれる成分「フィトンチッド」が自律神経を整え、リラックスを促すことにより情緒の安定に役立つとされています。
また、木の肌ざわりや温かさは触覚を心地よく刺激し、子どもたちの五感の発達に効果的です。特に、森や木などの自然とふれあう機会が少ない都市生活において、木育は大切な感性教育の機会となります。
さらに、木と命のつながりを学ぶことで、自然環境への尊重や持続可能な社会への関心が芽生えます。こうした五感を通じた体験は、創造力や想像力、そして他者との関係性を築く社会性も育まれるのが特徴です。
私たちが木育に込める思い|百年木材

木育は、木とともに生きる知恵や感性を育てる営みです。百年木材は、木に触れる豊かな体験を通じて、銘木の魅力と文化を次世代へ伝えることを目指しています。
樹齢100年を超える木には、時間の積み重ねが刻まれています。その尊さを日々の暮らしに届けることで、木と人、自然と暮らしの距離をもう一度近づけたいと願っています。
百年木材とは|銘木文化を未来へ
百年木材は、1959年創業の製材業から生まれたブランドです。宮崎県を拠点に、樹齢100年以上の銘木を用いて、家具・雑貨・インテリアなどのプロダクトを手掛けています。
かつて高級住宅に使われていた銘木ですが、現代の住宅様式の変化とともに使われる機会が減少しました。百年木材は、この貴重な木材に再び光を当て、食器や小物、テーブルなどのかたちに変えて、都市部や海外へ発信しています。
銘木文化を「過去のもの」にせず、今の暮らしにフィットする新しい価値として提案。長年育った木に敬意を払い、未来につなぐものづくりを大切にしています。
木を育てるもの「そだてもの」と捉える

百年木材では、銘木を「そだてもの」と呼んでいます。それは、ただの製品ではなく、時を重ねて深みを増し、使い手とともに育っていく存在だと考えているからです。
無垢材ならではの経年変化や味わいは、時間をかけて共に過ごすことでしか得られません。この考え方は、使い捨てではなく「育てる暮らし」を大切にする木育の考えにもつながっています。
また、百年木材ではワークショップも定期的に開催し、木製品のお手入れ方法や使い方の工夫を伝えています。木に対する理解や愛着を深めることで、木と共に生きる価値を日常に取り戻す活動を続けています。
自然との「共生」・地域との「共創」
百年木材の取り組みの根底には、「自然との共生」と「地域との共創」があります。素材となる木を生み出す山、その山を守り育てる林業従事者、加工を担う職人、そしてデザインをかたちにするクリエイター。
そのすべてがチームとなり、ひとつの製品をつくり上げています。こうした連携は、単なる製品づくりを超え、地域に雇用や新たな価値をもたらす取り組みへと広がっています。
また、製材の過程で出る木屑や皮も無駄にせず、燃料や染色材として活用。環境に配慮した循環型のものづくりを実践しています。自然と人、都市と山をつなぐ架け橋として、木育の理念を実践し続けています。
百年木材で暮らしに木に取り入れる【実例紹介】

木は使うことで価値が深まり、暮らしにやさしさと豊かさをもたらします。ここでは、百年木材が手掛ける実例を通して、木のある暮らしの魅力をご紹介します。
【事例1】保育園の「部屋札」

佐賀県にある若楠子ども園の新園舎に設置された教室サインは、木育の理念を体現したオリジナル作品です。使用された素材は、百年木材の檜と山桜。
丸い檜の枠は築木工が手掛け、やわらかな印象を与えるステンドグラスの花のモチーフはステンドグラスワークスミレが制作。文字の刻印は川上木材パラダイスデザイン事業部が、保育の現場にふさわしいフォントで丁寧に仕上げました。
自然素材のやさしい風合いと温かみが、子どもたちの成長を見守る空間にぴったりです。この部屋札も、園児たちと一緒に時を重ねて育っていく「そだてもの」として、木とともに歩む日々を支えています。
【事例2】デスク

百年木材のデスクは、学ぶ空間に自然のぬくもりを届けるプロダクトです。素材には樹齢100年以上の国産広葉樹を使用し、木の持つ落ち着いた色合いと、触れたときのやわらかさを大切に仕上げています。
天板は無垢材の一枚板を使い、節や年輪といった木本来の表情をそのまま活かしています。長時間座る学習や作業にも心地よさを感じられるよう、足元や天板の厚み、仕上げの角度にまでこだわっています。
このデスクは、単なる家具ではなく「そだてもの」として、使う人の暮らしに寄り添い、時間とともに表情を変えていきます。
日々の学びの場に、木の存在が静かに寄り添うことで、感性と集中力を支える一台となっています。
【事例3】柾目のダイニングテーブル&チェア

柾目(まさめ)とは、年輪が平行に整った木取りで、木目がまっすぐに通るのが特徴です。百年木材のダイニングテーブルとチェアには、この柾目材が用いられています。
見た目にすっきりとした印象を与えるだけでなく、反りや割れが起こりにくいため、長く使い続けられる安定感のある仕上がりになります。
コンセプトブックに登場するこのセットでは、木のぬくもりを際立たせるために、脚部に鉄を採用。無垢材の重厚感と鉄のシャープな印象が調和し、現代的な空間にも自然と馴染むデザインとなっています。
職人の手によって磨き上げられた柾目の表情と、異素材の組み合わせが生み出す美しさは、日々の食卓を特別なものに変えてくれます。
<関連記事>柾目とは?柾目板と板目板の違いや特徴、メリット・注意点も紹介

【事例4】木のワークショップ

百年木材が開催する木のワークショップでは、「育てるパン皿」などの木製品を使いながら、手入れ方法や木の魅力を体感できます。
使用するのは、樹齢100年以上の無垢材。サンドペーパーで整えたあとにオイルを染み込ませる体験を通じて、木の質感や経年変化の楽しさを学びます。宮崎県内をはじめ、大阪などでも実施され、地域の枠を超えて木育を広げています。
オンライン開催もあり、遠方からの参加も可能です。ものを大切に使い続ける文化を、ワークショップを通じて丁寧に伝えています。ワークショップの詳細はこちらからご覧ください。
木育は未来づくり|木との暮らしから
木育は、未来の暮らしや社会を形づくる大切な学びです。百年木材では、樹齢100年以上の銘木に触れ、その背景や魅力を知ることが、自然との関係性を見つめ直すきっかけになると考えています。
木を使うことで森が育ち、地域が潤い、次世代へつながる循環が生まれます。家具や雑貨として暮らしに木を取り入れることは、環境への配慮であり、日本の木の文化を未来につなぐ一歩でもあります。
宮崎県日向市に位置するグロースリングでは、製材事業とともに百年木材事業も営んでいます。柾目を活かしたオーダーメイド家具のほか、身近に木のぬくもりを感じられるインテリア雑貨も製作・販売しています。日々の暮らしのなかで、木育の想いをかたちにするお手伝いができると幸いです。
百年木材ホームページはこちらから。
木と共に生きるライフスタイルが、持続可能な未来の基盤になっていく…。私たちは、そんな暮らしを木育を通じて広げていきたいと考えています。