木材を見ると、赤っぽい部分と白っぽい部分が混在しているのを目にすることがあります。この色の違いは見た目だけでなく、木材の耐久性や品質に大きく関わる重要な要素です。
本記事では、杉を中心に赤身と白太それぞれの特徴や見分け方、そして樹齢100年以上の高樹齢材が持つ魅力について解説します。
赤身・白太の基本を知ることで、木材を見る際の一つの判断材料となり、用途に合った材選びの参考になります。
赤身(心材)とは|特徴・メリット
木材の中心部に位置する赤身は、木が成長する過程で重要な役割を果たしてきた部分です。赤身と白太の違いを理解することで、用途に応じた木材選びが可能になります。まずは赤身が木のどの部分にあたるのか、その基本的な特徴から見ていきましょう。
赤身(心材)とはどの部分?
赤身は、丸太を輪切りにしたときに中心部に現れる色の濃い部分で、学術的には「心材(しんざい)」と呼ばれます。木が成長を続ける中で、細胞としての活動を終えた部分が赤身となり、樹脂や色素が蓄積されることで赤褐色から薄赤色を呈します。
細胞が生命活動を停止しているため水分をほとんど含まず、木口から見ると年輪が密に詰まった状態で確認できます。木材全体に占める割合は一般的に約70%で、木の大部分を構成する重要な部分です。
赤身のメリット(耐久性・防蟻性・安定性)
赤身の最大の特長は優れた耐久性です。細胞内に蓄積された樹脂成分にはカンフルなどの防虫成分が比較的多く含まれ、シロアリなどの害虫に対して高い抵抗力を発揮します。古くから柱や梁といった構造材に赤身が選ばれてきたのは、この防蟻性の高さが理由です。
含水率の低さも大きな利点です。すでに細胞が活動を終えているため水分をほとんど吸収せず、乾燥後の収縮や反りが少なく寸法安定性に優れています。その結果、腐朽菌に対する抵抗性も高く、屋外使用や湿気の多い場所でも長期間品質を保ちます。
白太(辺材)とは|特徴・デメリット

白太は木材の外周部分に位置し、赤身とは異なる性質を持っています。その特性を理解することが木材選びには欠かせません。赤身と対比しながら、白太の役割と注意点を確認していきましょう。
白太(辺材)とはどの部分?
白太は丸太の外周部に位置する色の淡い部分で、学術的には「辺材(へんざい)」と呼ばれます。樹皮に近い場所にあり、木が生きている間、水分や養分を運搬する通路として機能していた組織です。
色調は淡いクリーム色から白っぽい色合いで、赤身との境界は明確に区別できます。木材全体に占める割合はおおよそ30%で、伐採時まで一部の細胞が生きており活発に水分を吸収していたため、含水率が高い状態にあります。
白太のデメリット(耐久・虫害・経年変化)
白太の最大の課題は耐久性の低さです。赤身に比べて防虫成分や樹脂が少ないため、シロアリやヒラタキクイムシなどの害虫による被害を受けやすい傾向があります。特に乾燥過程にある生材や夏場に伐採された木材の白太部分には、虫食いの跡が残ることが多く見られます。
含水率の高さも注意点です。水分を多く含む白太は腐朽菌の繁殖に適した環境を作りやすく、赤身に比べて腐りやすい性質を持っています。乾燥による収縮率も赤身より大きく、反りや割れが発生しやすいため、寸法精度が重視される家具や建具には不向きとされます。
赤身と白太の違い・見分け方|色・年輪・源平

赤身と白太を正確に見分けることは、木材の品質を判断する上で重要です。色や年輪、そして両者が混在する「源平材」について理解を深めましょう。色や年輪など、複数の視点から見ることで、木材の個性や価値を見極めるための手がかりになります。
赤身と白太の基本的な違い
赤身と白太の違いは、木の成長過程における位置と役割に由来します。赤身は木の中心部で細胞が活動を停止した部分、白太は外周部で伐採直前まで活発に水分や養分を運んでいた部分です。
赤身の細胞壁孔は膜で閉じられ空気や水分の透過を防ぐのに対し、白太の細胞は開いた状態で水分を吸収しやすい構造です。この違いが耐久性や安定性の差を生み出しています。
色で見分ける
最も分かりやすい見分け方は色の違いです。赤身は赤褐色から薄赤色を呈し、白太は淡いクリーム色から白っぽい色合いです。杉材では赤身と白太の色の対比が特に顕著で、柾目で見るとその境界線もはっきりと確認できます。
高樹齢の木材ほど赤身の色が濃く、樹脂成分も含まれる傾向があります。ゆっくりと成長した木は年輪が細かく密に詰まっており、深みのある色調を示します。
年輪で見分ける
年輪の状態も重要な指標です。赤身部分は年輪が密に詰まっており、特に高樹齢材では年輪幅が1〜2mm前後と細かい例が多く見られます。この目詰まりは木がゆっくりと成長した証であり、強度と美しさを高める要素です。
白太部分は比較的年輪の間隔が広く、均一な木目を示します。成長が活発な外周部であるため、柔らかい早材の部分が多く含まれています。
源平材とは
源平材とは、一枚の板や一本の丸太の中に赤身と白太が混在している木材を指します。赤白が混じる様子が、赤い旗の平氏と白い旗の源氏が対峙した源平合戦を連想させることから名付けられました。
杉材では赤身と白太の色差が激しいため、源平材のコントラストがはっきりと現れます。フローリング材や羽目板として使用されることが多く、ナチュラルで個性的な空間を演出します。
源平材のように白太が一部含まれる材でも、適切に選木・乾燥された高樹齢材であれば安定した品質が得られます。高樹齢材は年輪が細かく密度が高いため、白太部分であっても一定の強度や安定性を備える場合があります。
次章では、こうした高樹齢材ならではの木材の特徴について詳しく見ていきます。
赤身を活かした家具づくり|メリットと「柾目の家具シリーズ」の品質

赤身の特性を最大限に活かした家具づくりには、木材の目利きから加工技術まで多くのこだわりが詰まっています。素材の選定と加工の積み重ねが、家具としての品質を大きく左右します。
木材の目利きが品質を左右する
家具の品質を決定づけるのが原木の選定です。優良な原木の条件は形が真っ直ぐで真ん丸、芯が中心にあることです。特に重要なのが「当て」の見極めで、木がストレスを受けた年に形成される組織の歪みを見抜き、将来の狂いや反りを防ぎます。
高樹齢材では年輪の細かさも重要です。年輪幅が1〜2mm程度の細かい材は、ゆっくりと成長した証であり、強度・安定性・見た目のすべてに優れています。
加工のこだわり(歩留まり・無駄を出さない技術)
柾目を取り出す製材は歩留まりが悪くなりますが、柾目が持つ美しさと安定性はそれを補って余りある価値があります。年輪が直線的に並ぶ柾目は収縮の方向が均一で、反りや変形が生じにくく寸法安定性に優れています。
一本の丸太から価値を最大化するため、柾目を取った後の部材も用途に応じて活用し、無駄を最小限に抑えます。杉の高樹齢材は自然乾燥でも反りや割れが出にくく、時間をかけて水分を均等に抜くことで独特の質感と耐久性が生まれます。
樹齢100年以上の木を選ぶ理由
樹齢100年以上の木材を選ぶ理由は、50〜60年の木では得られない「深み・粘り・色味」が現れるからです。年輪が細かく密に詰まり、晩材の占める割合が多いため構造的な強度が高まります。
精油分が豊富なことも魅力です。特に赤身部分には樹脂成分がたっぷりと含まれ、防虫・防腐効果に優れています。100年という時間が生み出す質感は人工的には再現できず、世代を超えて受け継がれる価値があります。
「柾目の家具シリーズ」の紹介
柾目の家具シリーズは、従来の和風・民藝的な印象が強かった銘木を現代の空間に合う形で再解釈したプロダクトです。まっすぐな木目は静かで落ち着いた美しさを持ち、和洋を問わず空間に調和します。

【柾目のテーブル】
同じく45mm厚の天板を採用し、カンナ仕上げによる滑らかな表面は木の温かさを残しつつモダンな印象です。ダイニングテーブルやワークデスクとして活躍する汎用性の高さも魅力です。

【柾目のダイニングチェア】
45mm厚の天板は縁の角度加工で軽やかに見せ、職人によるカンナ仕上げで表面は滑らかです。脚部には直径10mmの丸棒鉄を使用し、背もたれ部分の鉄はしなりを持たせ体にフィットする座り心地を実現しました。
赤身を活かした“プロ厳選”の百年木材は家具に最適
赤身が多ければ必ず良い木材というわけではなく、使用目的や設置環境に応じた材選びが重要です。
赤身・白太それぞれの特性を理解したうえで木材を選ぶことが、結果として長く使える家具につながります。
グロースリングでは、樹齢100年以上の高樹齢材の中から、木の状態や年輪、赤身と白太のバランスを見極められる目利きのプロが原木を厳選しています。
さらに、素材の特性を活かした製材・加工を行うことで、反りや割れが出にくく、使い込むほど味わいの増す家具に仕上げています。

